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IAM(Identity and Access Management:IDおよびアクセス管理、読み方は「アイアム」)とは、組織内のユーザーID(アカウント)とアクセス権限を一元的に管理するためのセキュリティフレームワークです。「アイデンティティ管理」と「アクセス管理」を統合し、社内システムやクラウドサービスにおいて「誰が」「何に」「いつ」「どの範囲で」アクセスできるかをコントロールすることで、不正アクセスや権限の肥大化によるリスクを低減します。
具体的には、IAMには5つの中核機能があります:ID管理(アカウントの作成・更新・無効化)、認証(パスワード、多要素認証(MFA)、パスキーなど)、認可(ロールやポリシーに基づくアクセス権限の付与)、シングルサインオン(SSO)、そして監査・ログ管理。
クラウドの普及やリモートワークの定着により、従業員がアクセスするシステムやアプリケーションの数は増加の一途をたどっています。こうした環境下では、適切なID管理とアクセス制御なしに組織の情報資産を守ることは困難であり、IAMはゼロトラストセキュリティを実現するための基盤として、その重要性が急速に高まっています。
この記事では、IAMの基本的な仕組みから、PAMとの違い、導入のステップ、そしてIAMソリューションの選び方までを体系的に解説します。
IAMの仕組み
IAMは、組織のリソースへのアクセスを体系的に制御する仕組みです。その中核にあるのが「最小権限の原則」と呼ばれるセキュリティの基本概念です。
最小権限の原則とは?
最小権限の原則(Principle of Least Privilege:PoLP)とは、各ユーザーに対して業務遂行に必要最低限のアクセス権限のみを付与するという考え方です。必要以上の権限を与えないことで、組織のセキュリティリスクを大幅に低減できます。
たとえば、経理部門の担当者に営業システムの管理者権限を与える必要はありません。しかし実際には、「念のため」や「便利だから」という理由で過剰な権限が付与されるケースが少なくありません。このような状態は、万が一アカウントが侵害された場合に、被害範囲を拡大させる直接的な原因となります。
最小権限がセキュリティ被害を最小化する理由
アクセス権限を必要最小限に絞ることは、万が一の侵害発生時に「ブラストレディアス(影響範囲)」を縮小する効果があります。
仮に1つのアカウントが不正にアクセスされたとしても、そのアカウントの権限が限定的であれば、攻撃者がアクセスできるシステムやデータの範囲は限られます。さらに、ラテラルムーブメント(ネットワーク内の横方向への移動)も困難になるため、被害が組織全体に広がるリスクを抑えることができます。つまり、最小権限の徹底は、侵害の「入口」を絞るだけでなく、侵害後の「被害の拡大」を防ぐ防波堤としても機能します。
IAMの対象範囲
IAMが対象とするのは、社内の正社員だけではありません。契約社員、業務委託先、管理者アカウント、さらにはSaaS、クラウド環境、オンプレミスシステムに至るまで、組織内のあらゆるユーザーとシステムを横断的にカバーします。
特に近年は、DX化やクラウドサービスの利用拡大、ハイブリッドワーク環境の普及に伴い、IAMの対象範囲はますます広がっています。自社の環境に合わせてどこまでをIAMの管理対象にするかを明確にすることが、効果的なID管理の第一歩です。たとえば、業務で利用するSaaSアプリケーションは何種類あるのか、契約社員や外部パートナーのアカウントはどのように管理されているのかを把握することが、IAM導入の基盤となります。
なお、IAMと関連する領域として、IDのライフサイクルやガバナンスを管理するIGA(IDガバナンスと管理)、顧客向けのID管理に特化したCIAM(Customer IAM)、クラウド型でIAM機能を提供するIDaaS(Identity as a Service)などがあります。これらはIAMの概念を特定の用途や提供形態に拡張したものであり、自社の要件に応じて組み合わせて活用するケースが増えています。
IAMとPAMの違い
IAMについて調べていると、PAM(特権アクセス管理)という用語に出会うことがあります。両者は混同されがちですが、対象とする領域が異なります。
IAMとPAMの役割の違い
IAMは、組織全体のユーザーIDとアクセス権限を広く管理するフレームワークです。一方、PAMはその中でも特に高い権限を持つ特権アカウント(管理者アカウント、システムアカウントなど)に特化したアクセス管理ソリューションです。
つまり、PAMはIAMの一部であり、両者は補完関係にあります。IAMが組織全体の「入口」を管理するものだとすれば、PAMは機密情報や重要システムへの「最終ゲート」を厳格に守る役割を果たします。どちらか一方を導入すれば十分というわけではなく、IAMとPAMを組み合わせることで、組織のセキュリティ態勢は格段に強化されます。
PAMが重要な理由
特権アカウントは、システム設定の変更、ユーザー権限の付与・剥奪、機密データベースへの直接アクセスなど、組織にとって極めて重要な操作を行うことができます。だからこそ、攻撃者にとっても最も価値の高い標的となります。
特権認証情報が漏洩した場合、攻撃者はシステム構成を変更し、機密性の高いシステムにアクセスし、組織全体に大規模な損害を与える可能性があります。このリスクの大きさこそが、IAMだけでなくPAMによる特権アクセスの厳格な制御・監視が不可欠とされる理由です。
IAMが重要な理由
IAMは単なるIT管理ツールではなく、組織のセキュリティ、コンプライアンス、そして業務生産性に直結する経営基盤です。「社内ネットワークだから安全」という境界型の考え方が通用しなくなった今、ゼロトラストの原則に基づき、すべてのアクセスを検証・制御するIAMの重要性はかつてないほど高まっています。実際、IPA(情報処理推進機構)が毎年発表する「情報セキュリティ10大脅威」では、認証情報の窃取や不正アクセスに起因する脅威が常に上位を占めており、IAMの整備は組織防衛の最優先課題の一つです。ここでは、IAMが組織にとって不可欠とされる3つの理由を解説します。
不正アクセスと内部リスクへの対策
サイバー攻撃の多くは、認証情報の窃取や不正利用から始まります。IAMが適切に運用されていない組織では、以下のようなリスクが常に存在します。
役職変更後に不要になったアクセス権限が放置されている、退職した契約社員のアカウントが無効化されていない、複数の担当者で共有アカウントを使い回しているなど、いずれも攻撃者にとっての侵入経路になり得ます。また、脆弱な認証方式をそのまま使い続けていることも、リスクを高める大きな要因です。
IAMを適切に導入・運用することで、これらのリスクを体系的に管理し、不正アクセスの発生可能性を大幅に低減できます。2025年には、国内の通販事業者が業務委託先のアカウントに多要素認証(MFA)を適用していなかったことが原因でランサムウェア攻撃を受け、約74万件の顧客情報が流出、特別損失として約52億円を計上する事態に至りました。IBM「Cost of a Data Breach Report 2025」によれば、データ侵害の世界平均コストは444万ドル(約6.5億円)に達しており、認証情報の管理不備がもたらす損害は決して対岸の火事ではありません。
監査対応とコンプライアンスの強化
多くの業界規制やセキュリティ基準では、「誰が、いつ、どのデータにアクセスしたか」を証明できることが求められます。たとえば、ISMS(ISO 27001)やPCI DSS、さらには個人情報保護法への対応においても、アクセス制御の実施状況を監査人に示す必要があります。
IAMを導入していれば、アクセスログの記録、権限の定期レビュー、ガバナンスプロセスの文書化などを一元的に管理でき、監査対応を効率化できます。適切なIAMプログラムの存在そのものが、組織がセキュリティリスクの軽減に積極的に取り組んでいることの証明となります。
業務効率とIT運用コストの最適化
IAMは、セキュリティの強化だけでなく、日常業務の効率化にも貢献します。
SSOの導入により、従業員は複数のシステムに個別にログインする手間から解放されます。パスワードリセットに関するヘルプデスクへの問い合わせも減少し、IT部門の負荷が軽減されます。さらに、入社時のアカウント発行や退職時の無効化が標準化されることで、オンボーディング・オフボーディングのプロセスがスムーズになり、組織全体で一貫したアクセスポリシーが適用されます。
IAMを自社に導入するには
IAMの重要性を理解したうえで、次に考えるべきは「どのように導入を進めるか」です。ここでは、IAM導入を成功させるための3つのステップを紹介します。
現状のID・アクセス環境を棚卸しする
IAM導入の第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。
以下の項目をチェックリストとして活用してください:
- 組織内で利用されているシステムとアプリケーションは何か?
- ユーザーアカウントは何件存在するか?
- 現在の権限モデルはどうなっているか?
- 管理者アカウントは誰が保有し、どのように管理されているか?
この棚卸しを行うことで、IAMの対象範囲が明確になり、優先的に対処すべきリスク領域が見えてきます。すべてのIAM戦略は、この可視化から始まります。
アクセスポリシーと運用ルールを標準化する
現状を把握したら、次はアクセス管理のルールを標準化します。
具体的には、職務や部門に基づいたロールの定義、多要素認証(MFA)の全社的な適用、契約社員アカウントの有効期限設定、そして「誰がどのアクセス権限を承認するか」というプロセスの文書化が含まれます。ポイントは、例外をできるだけ排除することです。例外が多いほどセキュリティの穴が生まれ、運用の複雑さが増します。明確なポリシーと標準化されたプロセスこそが、IAMを持続的に機能させる基盤です。
継続的にモニタリングし改善する
IAMは「導入して終わり」ではなく、継続的に改善していくプロセスです。
導入後は、アクセスログの定期的な監視、権限の定期レビュー、ポリシーの見直しと改善を習慣化します。新しいシステムの導入や組織変更に合わせて、IAMの設定も柔軟にアップデートしていくことが重要です。この継続的な改善サイクルが、IAMの運用成熟度を高め、組織のセキュリティ態勢を長期的に強化していきます。
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IAMソリューションの選び方
IAMの実現には、適切なソリューションの選定が欠かせません。市場には多くのIAMツールが存在しますが、多くは以下の3つのカテゴリに分類されます。
SSOは統合認証の「起点」
SSO(シングルサインオン)は、従業員が一度の認証で複数のシステムやアプリケーションにアクセスできるようにするソリューションです。ログインの煩雑さを解消し、パスワード疲れを軽減する効果があります。
ただし、SSOだけでは認可の細かな制御や特権アクセスの管理まではカバーできません。SSOはIAM戦略における統合認証の「起点」として重要な役割を果たしますが、組織のセキュリティを万全にするためには、追加のソリューションと組み合わせる必要があります。
PAMで特権アクセスを保護する
PAM(特権アクセス管理)は、管理者権限やシステムアカウントなど、高いアクセス権限を持つアカウントを専門的に管理・監視するためのソリューションです。アクセスの承認ワークフロー、セッションの記録・監視、監査対応などの機能を通じて、最も機密性の高いシステムとデータを保護します。
PAMはIAMを補完する不可欠な存在であり、特権アカウントの侵害リスクが高まる現代のサイバー脅威環境において、その重要性はますます高まっています。
企業向けパスワード管理で組織の認証情報を一元保護する
企業向けパスワード管理は、組織全体のパスワードと認証情報を安全に管理するためのソリューションです。個人向けのパスワード管理ツールとは異なり、管理者コンソール、ロールベースのアクセス制御、監査ログ、大規模な認証情報の一元管理といった企業向けの機能を備えています。
SSOがカバーしないアプリケーションや、パスワードベースの認証が引き続き必要なシステムにおいて、企業向けパスワード管理はセキュリティの重要な補完的役割を果たします。
SSO・PAM・企業向けパスワード管理をひとつのプラットフォームで実現
実際の運用では、SSO、PAM、企業向けパスワード管理をそれぞれ別のベンダーから導入すると、ライセンスや運用にかかるコストが増加するだけでなく、管理の複雑さやツール間のギャップが生じ、結果としてセキュリティリスクや運用負荷の増大につながることがあります。KeeperPAM®は、企業向けパスワード管理、シークレット管理、特権アクセス管理を1つのゼロトラストプラットフォームに統合しており、複数のツールを個別に運用する必要がなくなります。IAMソリューションを検討する際は、こうした統合型のアプローチも選択肢に含めることで、導入・運用の負荷を大幅に軽減できます。
IAMで組織のセキュリティを強化する
IAMは、組織の情報資産を守るための基盤であり、最小権限の原則に基づいたアクセス制御を通じて、セキュリティ、コンプライアンス、生産性のすべてを向上させます。導入においては、まず現状の棚卸しから始め、ポリシーの標準化、そして継続的な改善というステップを踏むことが重要です。
また、効果的なIAM戦略には複数のソリューションを組み合わせるアプローチが求められます。特に特権アクセスの管理と認証情報の保護は、成熟したID管理セキュリティの実現において不可欠な要素です。
自社のIAM戦略をどこから始めるべきか、あるいはKeeperPAM®が組織のセキュリティにどう貢献できるかを知りたい方は、ぜひデモをリクエストしてその効果を体験してください。
よくある質問
IAMとは何の略ですか?
IAMは「Identity and Access Management」の略称で、日本語では「IDおよびアクセス管理」と訳されます。組織内のユーザーIDとアクセス権限を一元的に管理するためのセキュリティフレームワークを指します。
IAMで何ができますか?
IAMを導入することで、ユーザーアカウントのライフサイクル管理(作成・変更・無効化)、多要素認証によるセキュリティ強化、ロールベースのアクセス制御、SSOによるログインの効率化、そしてアクセスログの記録と監査対応が可能になります。
認証と認可の違いは何ですか?
認証(Authentication)とは、ユーザーが「本人であるか」を確認するプロセスです。パスワードの入力や多要素認証がこれに該当します。一方、認可(Authorization)とは、認証済みのユーザーに対して「何にアクセスできるか」を決定するプロセスです。認証が「あなたは誰ですか?」という質問に答えるのに対し、認可は「あなたは何をする権限がありますか?」に答えるものです。
IAMとPAMの違いは何ですか?
IAMは組織全体のユーザーIDとアクセス権限を幅広く管理するフレームワークです。PAM(特権アクセス管理)はIAMの一部であり、管理者アカウントやシステムアカウントなど、特に高い権限を持つアカウントに特化して管理・監視するソリューションです。両者は補完関係にあり、組み合わせることでセキュリティを最大化できます