総務省は「地方公共団体における情報セキュリティポリシ
ペネトレーションテスト(ペンテスト)は、別名でペンテストとも呼ばれ、組織がシステム内のセキュリティ上の弱点を見つけるために行うサイバー攻撃のシミュレーションです。このテストを通じて、サイバー攻撃で悪用されやすい箇所を事前に特定し、修正が必要な領域を明らかにできます。ペネトレーションテストは、システムの問題を解決し、不正アクセスを防ぎ、コンプライアンス要件を満たしながら、フィッシング攻撃のリスクを減らすために役立ちます。
ここでは、組織がデータを保護するために利用できるペネトレーションテストの仕組み、ペンテストの種類、さまざまなペンテストの実施方法について説明します。
ペネトレーションテストの仕組み
ペネトレーションテストの仕組みは、以下の5つの段階で構成され、それぞれが重要な役割を果たします。

1. 準備
テストを実施する目的と対象範囲を明確にします。たとえば、特定のシステムやネットワークの安全性を検証する場合、その範囲を具体的に定めます。また、実施スケジュールや期間を決め、関係者の間で合意を取ります。その後、信頼できるホワイトハットハッカー(倫理的ハッカー)を選定し、契約を結びます。
2. 情報収集
ホワイトハットハッカーは、組織のネットワークやセキュリティ設定について調査を行います。この段階では、公開されている情報やアクセス可能なシステム構成を分析し、脆弱性が潜む可能性のあるポイントを特定します。得られた情報を基に次の段階での攻撃計画を立てます。
3. 攻撃実行
情報収集で特定した脆弱性を基に、ホワイトハットハッカーが実際にシステムやネットワークへの侵入を試みます。この段階では、サイバー犯罪者が使用する手法を模倣し、どのように攻撃が可能かを検証します。たとえば、パスワードを推測したり、既知の脆弱性を悪用してシステムへのアクセスを試みます。
4. 報告
攻撃実行が完了した後、ホワイトハットハッカーはテストの結果を報告します。この報告書には、発見された脆弱性、攻撃に成功した経路、アクセスできたデータやシステムの詳細が含まれます。また、組織がすぐに実施できる改善提案も提供されます。
5. 改善
最後に、報告書の内容を基にシステムの脆弱性を改善します。この段階では、組織がシステムを安全な状態に戻し、必要に応じて設定やソフトウェアを更新します。これにより、今後のサイバー攻撃に対する耐性が強化されます。
ペネトレーションテストの種類
ペネトレーションテストの主な種類は、ネットワーク、ウェブアプリケーション、無線、ソーシャルエンジニアリングです。
ネットワークペネトレーションテスト
ネットワークペネトレーションテストでは、サイバー犯罪者が悪用する可能性のあるセキュリティ脆弱性を探し、シミュレーションのサイバー攻撃に対するネットワークの安全性を評価します。 ネットワークペネトレーションテストを実施すると、組織はネットワークを侵害するために悪用される可能性のある脆弱性を特定できます。 こうしたペンテストは、経済的損失や組織の信用低下につながる可能性があるデータ漏洩の防止に役立ちます。
ウェブアプリケーションペネトレーションテスト
ウェブアプリケーションペネトレーションテストは、ウェブアプリケーションに対するサイバー攻撃をシミュレートするセキュリティテストです。 目的は、ウェブアプリケーション内の脆弱性を特定して機密データの安全性を確保することにあります。 ウェブアプリケーションは個人情報にアクセスすることが多いため、ウェブアプリケーションのペネトレーションテストを実施して、サイバー攻撃が発生した場合にもデータが保護されることを確認するのは重要なことです。
無線ペネトレーションテスト
無線ペネトレーションテストは、サイバー攻撃をシミュレートすることで無線ネットワークのセキュリティとデバイス接続の安全性を評価します。 これには組織の無線ネットワークに接続するコンピュータ、電話、その他のモノのインターネット(IoT)デバイスが含まれます。 無線ペネトレーションテストを実施することで、将来のサイバー攻撃に対するより優れた保護をこれらのデバイスに提供できます。
ソーシャルエンジニアリングペネトレーションテスト
ソーシャルエンジニアリングペネトレーションテストは、シミュレーションのサイバー攻撃に対する組織の従業員の対応を測定します。 ソーシャルエンジニアリングペネトレーションテストを実施する場合、組織はフィッシング攻撃、スミッシング攻撃、ビッシング攻撃のシミュレーションを行います。 攻撃に対する従業員の直感と反応に基づいて改善すべき領域を特定し、セキュリティ意識に関して従業員のトレーニングを行うことで、人的ミスに起因する、サイバー犯罪者による不正アクセスを防止します。
ペネトレーションテストと脆弱性診断の違い
ペネトレーションテストと同時に挙げられる用語として、脆弱性診断があります。ここでは、両者の違いをご紹介します。
ペネトレーションテスト
ペネトレーションテストの目的は、実際に攻撃者の視点で脆弱性を悪用し、システムの防御力を検証することです。ホワイトハットハッカーが実際の攻撃手法をシミュレーションし、システムに侵入できるかを試みます。このテストでは、特定の脆弱性がどの程度攻撃に利用される可能性があるかを検証し、システムやデータがどの程度のリスクにさらされるかを明らかにします。実際の侵入経路を再現して攻撃シナリオを評価し、セキュリティ強化に役立つ情報を提供します。ペネトレーションテストは、高度なセキュリティが求められるシステムや、攻撃を受けるリスクが高い環境で実施されます。
脆弱性診断
脆弱性診断の目的は、システムやネットワークに潜在する脆弱性を広範囲にわたって発見することです。専用のツールやスキャンソフトウェアを使用して、既知の脆弱性や設定ミスを自動的に検出します。この診断では、広い範囲を短時間で調査でき、主に診断結果を基に修正が必要な箇所を特定します。ただし、攻撃のシミュレーションは行わず、あくまで脆弱性の有無を確認することに重点を置いています。脆弱性診断は、新しいシステムの導入前や、定期的なセキュリティチェックに適用されます。
ペネトレーションテストの実施方法
ペネトレーションテストにはいくつかの種類があるだけでなく、テスト実施においてもいくつか方法があり、外部テスト、内部テスト、ブラインドテスト、ダブルブラインドテスト、ターゲットテストなどが挙げられます。
外部テスト
外部ペネトレーションテストでは、組織の外からサイバー攻撃のシミュレーションを行います。 目的は、サイバー犯罪者が不正アクセスを得るのに使用できる潜在的なエントリポイント、つまり攻撃ベクトルを特定することです。
内部テスト
内部ペネトレーションテストでは、サイバー犯罪者が組織のシステムへの内部アクセスを持っている状況をシミュレーションします。 目的は、内部不正が引き起こしうる損害の規模を判断することにあります。 例えば、組織内の誰かが不注意で弱いパスワードを使っている場合や、個人が組織の内部から意図的な妨害行為を行おうとしている場合などが考えられます。 内部テストは、特に内部アクセスを持つ個人について、既存のセキュリティ脆弱性を特定します。
ブラインドテスト
組織がサイバー攻撃のシミュレーションが行われることを知っている場合、そのテストはブラインドテストと見なされます。 組織はこのペネトレーションテストに備えることができますが、ホワイトハットハッカーはあまり多くを知らされず、組織に関する限られた情報、あるいは公開されている情報にのみに基づいてテストを実施します。 ブラインドテストは、実際のサイバー攻撃が発生した場合にサイバー犯罪者がアクセスできるデータについて、組織に現実的な結果を提供することができます。
ダブルブラインドテスト
ダブルブラインドテストの場合、組織側もホワイトハットハッカー側も、シミュレーションのサイバー攻撃が行われることを知らないか、あるいはそれについて何の情報も与えられません。 このようなテストは、ランダムに行われるので誰も事前に準備することができず、このため両サイドにとって現実的なサイバー攻撃をシミュレーションできます。
ターゲットテスト
組織内の特定の領域、つまりターゲット領域のセキュリティを評価するには、ターゲットテストによるペネトレーションテストを実施する必要があります。 このテストでは、組織のシステムの特定部分におけるセキュリティの脆弱性を特定するためにサイバー攻撃をシミュレーションします。 例えば、組織のシステムで機密データを含む部分が安全であることを確認したい場合、ターゲットテストを実行してその領域におけるセキュリティの脆弱性を判定します。
ペネトレーションテスト完了後の次のステップは?
ペネトレーションテストを無事完了させたら、本当に重要な作業が始まります。 組織が取るべき最初のステップは、ホワイトハットハッカーから得た結果と報告内容を確認することです。 ペネトレーションテストで発見されたセキュリティの脆弱性と悪用されたエントリポイントを調べれば、修正計画を策定する際に最初に検討するべき点を判断できます。 報告内容に基づいて、さまざまなセキュリティ脆弱性の修正を優先的に行う計画を策定します。 また、更新後のシステムがシミュレーションのサイバー攻撃に対して脆弱でなくなったことを確認するため、ペネトレーションテストの再実施を計画することも検討します。
まとめ:ペネトレーションテストで組織を保護
ペネトレーションテストを実施することで、組織は制御された環境でサイバー犯罪者が悪用する可能性のある脆弱性を特定できます。これにより、セキュリティを強化し、攻撃のリスクを最小限に抑えることが可能です。特に、機密データや重要な業務を支えるネットワークの安全性を確保するうえで、このプロセスは非常に重要です。
また、サイバー攻撃は手口が進化し続けているため、システムの脆弱性を最新の視点で評価する必要があります。ペネトレーションテストを定期的に行うことで、組織は新たな脅威に対応しやすくなり、コンプライアンス要件の遵守や顧客の信頼維持にも役立ちます。
さらに、このテストは組織内でのセキュリティ意識の向上にもつながります。テスト結果を基に具体的な対策を講じることで、データ、デバイス、ネットワークへの不正アクセスを未然に防ぎ、システムの安全性を最大限に保つことが可能です。