欧州連合 (EU) は、「主権、セキュリティ、信頼」
ランサムウェア攻撃による被害の拡大を防ぐためには、管理者アカウントやActive Directoryといった特権アカウントの保護が極めて重要です。
ランサムウェア攻撃は、最初に侵入ポイントを見つけた後、内部で水平展開を行い、ネットワーク内を拡散していきます。
その際、権限を昇格などして特権アカウントを奪取されると、攻撃者は一気に複数のシステムやサーバーにアクセスできるようになるため、被害が全社規模にまで拡大する恐れがあります。
そこで本記事では、特権アカウントの重要性やランサムウェアの最新動向を踏まえ、ランサムウェア攻撃から特権アカウントを守るための具体的な対策方法を解説します。
特権アカウントとは?そしてその重要性とは?
特権アカウントとは、ITシステムにおいて通常のユーザーアカウントよりも高い権限を持ち、重要な操作が可能なアカウントのことを指します。
たとえば、サーバーのrootアカウント、Windowsの管理者アカウント、Active Directoryのドメイン管理者、ネットワーク機器の設定権限を持つアカウントなどが該当します。
これらのアカウントは、システム設定の変更、ユーザー管理、ソフトウェアのインストール、ログやデータの閲覧・削除といった、組織の中枢に関わる操作ができるため、乗っ取られると非常に深刻な被害につながる可能性があります。
そのため、特権アカウントは、企業の中でもっとも重要な資産の一つとして、厳格な管理が求められます。では、具体的にどのような理由から、その重要性がこれほどまでに高いとされているのでしょうか。
サイバー攻撃の標的対象になりやすい
攻撃者は、ランサムウェアを含む多くのサイバー攻撃において、まずはネットワーク内に侵入し、組織内を水平展開したり、特権昇格を行い、その後、特権アカウントを奪取しようとします。
理由は明確で、特権アカウントを取得されると、攻撃者にとってのアタックサーフェス(攻撃対象領域)が一気に広がり、システム全体への影響力が格段に増すからです。
誤操作や内部脅威でさえも大きな被害になりうる
特権アカウントは外部攻撃者だけでなく、内部の関係者による誤操作や悪意ある行動によっても深刻な影響を及ぼします。
たとえば、管理者が誤って設定を変更したり重要なデータを削除したりすれば、業務システムが停止したり、顧客サービスに支障をきたしたりする事態になりかねません。さらに、退職予定の従業員や不満を抱えた社内関係者による意図的な情報漏えいや妨害行為といった、内部脅威も、企業にとって現実的かつ重大なリスクです。
実際、ベライゾンが発表した2025年の「データ漏洩調査報告書(DBIR)」では、情報漏洩インシデントの60%以上が人的要素に起因していると報告されており、内部の人間による操作ミスや不正行為がセキュリティ上の最大の弱点であることが明らかになっています。
このように、信頼している社内ユーザーこそが最大の脅威になり得るという前提のもと、特権アカウントは常に監視・記録され、必要最小限の範囲でのみ使用を許可するという厳格な管理が求められます。
コンプライアンス・監査対応でも必須対象
特権アカウントの管理は、単なるセキュリティ強化のためだけでなく、法令や業界規制への対応という観点からも極めて重要です。実際に、国内外の多くのセキュリティフレームワークやコンプライアンス基準において、特権アカウントに対する適切な制御やアクセス監視が必須要件とされています。
例えば、官公庁や重要インフラ事業者では、経済産業省が策定した「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」や、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)のガイドラインなどにおいても、特権アカウントの厳格な管理が求められています。
これらの要件を満たせていない場合、監査での指摘や認証の取得・更新に支障が出るだけでなく、情報漏えいや業務停止といったインシデント発生時には、企業の法的責任や社会的信用の失墜につながる恐れもあります。
ランサムウェア攻撃の最新動向
警察庁の発表によると、2024年度に報告された日本国内のランサムウェア被害件数は合計222件に上り、これは2022年に続く最高の高水準で推移しています。
被害件数の増加は、攻撃手法の高度化や多様化、さらには企業のセキュリティ対策の遅れが影響していると考えられます。さらに、サイバー犯罪全体の検挙件数は過去10年間で最多となる13,164件に達しており、サイバー攻撃が年々激化していることが統計的にも明らかになっています。
また、報告されたランサムウェア被害のうち、約63%が中小企業を標的としていたという点で、被害を受けた業種を見ると、最も多かったのは製造業であり、次いで卸売・小売業、サービス業と続いています。ただし、攻撃者が特定の業種を意図的に狙っているわけではなく、脆弱性のある企業が被害に遭いやすいというのが実態です。
特権アカウントをランサムウェアから守るための方法
ランサムウェア攻撃の多くは、最初の侵入後に特権アカウントの奪取を試み、そこから社内ネットワーク全体に攻撃を拡大させます。そのため、特権アカウントを保護することは、ランサムウェア被害の“拡大防止”において極めて重要です。以下では、特権アカウントをランサムウェアの脅威から守るために実施すべき主要な対策を解説します。
アクセス権限の最小化
ランサムウェアがシステム内で横展開するのを防ぐためには、最小権限の原則を徹底することが重要です。これは、各ユーザーやアプリケーションに対して、業務に必要な範囲に限定してアクセス権限を与えるという考え方です。ロールベースアクセス制御(RBAC)によって職務ごとの役割に応じた権限を割り当てることで、過剰な権限の付与を防ぐことができます。また、特権アクセスを一時的にのみ許可するジャストインタイムアクセス(JIT)を採用すれば、永続特権を持つアカウントの存在を最小化でき、不正アクセス時のリスクを大幅に抑えられます。
ゼロトラストモデルの導入
ランサムウェア攻撃は、信頼された内部ネットワークを利用して感染を広げるケースが多いため、「すべてを信頼しない」というゼロトラストモデルの導入が有効です。このモデルでは、ネットワークの内外に関係なくすべてのアクセスを常に検証します。特権アカウントでの操作であっても、ユーザーの正当性、接続環境、行動パターンを随時チェックし、異常があれば即座にブロックします。ランサムウェアのように内部から展開される攻撃に対して、常時監視・常時認証と認可の体制は非常に強力な防御手段となります。
パスワード管理とシークレット管理の徹底
攻撃者がランサムウェアを拡散させる際、特権アカウントの認証情報を盗み取るケースは非常に多く報告されています。そのため、強力なパスワード管理とシークレットの保護は基本中の基本です。パスワードは使い回しを避け、複雑かつ一意なものを使用する必要があります。特権アカウントのパスワードやAPIキー、SSHキーなどは、特権アクセス管理ソリューション(PAM)やシークレット管理ツールを活用し、暗号化して安全に保管・管理することが求められます。資格情報を平文で保存したり、手作業で管理したりする運用は、攻撃者にとって格好の標的になります。
多要素認証(MFA)の徹底
ランサムウェア攻撃における初期アクセス手段の一つに、ID・パスワードの盗用があります。これに対抗するために、多要素認証(MFA)の導入は不可欠です。特権アカウントのログイン時には、パスワードだけでなくスマートフォンアプリやセキュリティキー、生体認証など複数の要素で本人確認を行うことで、仮に認証情報が漏洩しても不正ログインを防ぐことができます。特に、VPNやクラウド管理画面、RDPといった外部接続が可能な箇所では、MFAを義務化することでセキュリティを大幅に強化できます。
監査ログとアクティビティの可視化
ランサムウェアの感染拡大やバックアップの破壊などは、特権アカウントの操作によって引き起こされるケースが少なくありません。したがって、特権操作のすべてを記録し、アクティビティを可視化しておくことが、迅速な被害の把握と対応に直結します。操作ログをリアルタイムで監視することで、異常行動や未承認のアクセスを即座に検出できます。ログの長期保存や改ざん防止も考慮しながら、必要に応じてSIEMなどの分析アラートツールと連携させることで、より高度な監査・可視化が可能となります。
特権アカウントの保護が組織全体の安全につながる
特権アカウントは、企業のITシステムや機密データ、インフラの中枢にアクセスできる重要な存在であり、攻撃者にとって最も魅力的な標的でもあります。
ランサムウェア攻撃の多くは、初期侵入後に特権アカウントの奪取を経て被害を全社規模に拡大させる構造をとっており、これらのアカウントを適切に管理・保護できているかどうかが、組織全体のセキュリティ強度を大きく左右します。
アクセス権限の最小化、ゼロトラストの実践、強固なパスワード・シークレット管理、多要素認証の徹底、ログの可視化といった多層的な防御が必要不可欠であり、それらを現実的かつ効率的に運用するには、高度なソリューションが求められます。
そこで注目されているのが、ゼロトラスト型のPAMです。その中でも、KeeperPAMは、ゼロトラストの考え方をベースに、特権アカウントの可視化、制御、監査を一元的に実現するクラウドベースのPAMソリューションです。ユーザーやセッションごとのアクセス制御、パスワードやシークレットの安全な保管との統合、ジャストインタイムアクセスの提供など、ランサムウェアを未然に防ぐために必要な機能を包括的に備えてます。
中小企業から大企業まで、組織の規模や業種を問わず、KeeperPAMを導入することで、特権アカウントに対する統制を強化し、組織全体のサイバーリスクを大幅に軽減することが可能です。
KeeperPAMのデモをリクエストして、組織の特権アカウントが実際にどのように保護できるかをご確認ください。