マネージドセキュリティサービスプロバイダー (MSS
組織が日常業務にAIを取り入れる動きは急速に広がっています。 MicrosoftのCopilotやGoogleのGeminiを使って会議録をまとめるチーム、コーディング用Copilotを使ってソフトウェアの提供を加速する開発者、AI搭載チャットボットで対応時間の短縮を図るカスタマーサービスなどは、その流れの一環にすぎません。 こうした取り組みの目的は生産性の向上とイノベーションの促進にありますが、組織のアイデンティティ環境も、気付かないうちに変化させています。
ビジネスシステムに安全にアクセスできることは、AI導入の前提条件です。 AIアシスタントは、Microsoft 365、Salesforce、SharePoint、組織内のナレッジベースなど、どのシステムに接続する場合でも、適切に付与・管理された認証情報と権限を使用してアクセスを認証し、情報を取得し、アクションを実行します。 このようにして、AIを導入するたびに保護を必要とする新たなアイデンティティが組織内に増えていきます。
クライアントとの会議や幹部との話し合いでAIについて議論する場合、生産性の向上、ガバナンスポリシー、許容される用途が話題の中心となります。 AI関連技術を支えるために作成されるアイデンティティにスポットライトが当てられることは極めて限定的です。
では、AIを使ったプロセスで作成される新たなアイデンティティにはどのようなものがあるのでしょうか。
この質問に回答するには、AI導入以外のさまざまな要素を考慮に入れる必要があります。
AI導入により拡大するMSPのアイデンティティ攻撃対象領域
企業が新しいAIツールを導入する場合を考えてみましょう。
マーケティングチームはAI入力アシスタントをSharePointに接続します。 営業チームはAI搭載CRMアシスタントを有効にします。 カスタマーサービスマネージャーは内部文書に接続したチャットボットを立ち上げます。 運用チームはAI駆動型オーケストレーション機能を使って反復的ワークフローを自動化します。
上述した各用途では、AIが個別に生産性強化の役割を担っているように見受けられますが、 セキュリティの観点からは、見かけ以上に広い範囲に影響が及んでいます。
これらの個々のソリューションは、目的とするタスクを実行するために信頼性の高いアクセスを必要とします。 アクセス認証を得るために、OAuthに接続するものもあれば、APIキー、サービスアカウント、マシンの認証情報、アクセストークンを利用するものもあります。 各AIには、ユーザーの代わりに情報を取得し、ビジネスアプリケーションと通信し、アクションを実行するための権限が与えられます。 ただ、その結果新たに発生する個々のアイデンティティに注意が払われることはほとんどありません。 これらのアイデンティティが積み重なるにつれ、アイデンティティの攻撃対象領域という、多くの組織が見過ごしていた要素が拡大し始めます。
エンタープライズ全体で急速にAIの利用範囲が拡大する中、この課題は無視できないものとなっています。 Microsoftの「2025 Work Trend Index (仕事のトレンド指数)」によると、ビジネスリーダーの82%は、今年がAI戦略とAIを活用した業務のあり方という中心的テーマを再考する正念場となると考えています。 また、AIエージェントを使ってワークフローやビジネスプロセスの完全自動化を完了している組織の割合も46%に達しており、AIが実験段階から日常業務にいかに急速に浸透しているかがうかがえます。
上記のデータからはAI利用の増加以外の傾向も読み取れます。
その傾向とは、エンタープライズ環境全体で信頼性の高いアクセスを必要とするアプリケーション、ワークフロー、自動化プロセスの数が増加しているというものです。
非人間アイデンティティ (NHI) による潜在的リスクの発生理由
従来のアイデンティティプログラムは人間のユーザーを想定して策定されていました。 従業員が入社すると、アカウントが設定され、職務に応じてシステムへのアクセス権が付与されます。職務の異動や退職時にはアクセス権が削除されます。 このプロセスは必ずしもスムーズに行われるとは限りませんが、責任の所在が明確で、予測可能なライフサイクルに従っています。
AIはこのプロセスに従いません。
AIアシスタントはOAuthトークンを通じて認証したり、 ワークフロー自動化プラットフォームは複数のサービスアカウントやAPIキーを使用したり、 自律型エージェントは人間の直接介入を必要とせずに、継続的に動作するマシンの認証情報を使って複数のビジネスアプリケーションにアクセスしたりする可能性があります。 アプリケーションのセットアップ中や、AIツールを既存システムに接続している管理者、開発者、ビジネスユーザーなどの個人によってこれらのアイデンティティが即座に作成されることが日常茶飯事である点も従業員アカウントと異なります。
これらのアイデンティティの多くは、従業員アカウントを管理するために組織が設けている既存プロセスの枠外にあります。 削除するとワークフローの中断や統合の断絶を招く可能性があるため、不要になった後も長期間有効なまま放置されるものもあります。 こうした状態が続くうちに、主要ビジネスシステムに正当にアクセス可能で、特定のユーザーには紐付けされていないアイデンティティが大量に組織内に蓄積されます。
セキュリティのプロから「非人間アイデンティティ (NHI)」と総称されるこの種のデジタルアイデンティティは、従業員でなく、アプリケーション、サービス、ワークロード、自動化プロセスによって使用されます。 用語自体にはなじみがなくても、その概念はよく知られており、 APIキー、OAuth接続、サービスアカウント、マシンの認証情報、AIエージェントなどは、この概念の実例であり、いずれも別のユーザーの代理として機能し、特権アクセスを持つため、ライフサイクル全体にわたる管理が必要なアイデンティティです。
NHIの数は増加の一途を辿っています。 AIデプロイメント、自動化ワークフロー、システム統合が新たに導入されるたびに、ガバナンスを必要とする認証情報、サービスアカウント、マシンのアイデンティティが追加されます。 相互接続されるアプリケーション、ワークフロー、システムが増えるほど、可視性を維持することが難しくなっていきます。
これは単なる数量管理の問題ではなく、 むしろ、可視性と制御の問題と言えます。
なぜなら、その存在を把握していないアイデンティティを効果的に保護することも、可視化されていない権限を定期的に見直すことも、付与されたことに気付いていないアクセス権を削除することもできないためです。
残念ながら、こうした不備は、攻撃者につけ込む隙を与えます。
管理不十分なマシンのアイデンティティは攻撃者の格好の標的
サイバー犯罪者にとって、アイデンティティに人間とマシンの区別はなく、 どちらも重要なシステムや機密データにアクセスするための最短経路にすぎません。
攻撃者は長年、従業員に的を定めたフィッシング攻撃や認証情報の盗難に従事してきました。ユーザーアカウントが組織の環境に侵入する最も直接的な経路であったためです。 この点は今も変わっていませんが、使用可能な侵入地点の数は変化しています。
現在、目立って増えているのが、APIキー、サービスアカウント、アクセストークン、マシンの認証情報の悪用です。こうしたアイデンティティの多くは、権限範囲が広く、アクセス可能期間が長いのに対して、従来のユーザーアカウントより監視がかなり緩いという弱点があります。 サービスアカウントは従業員アカウントと違って、予期しないリクエストを疑問視しません。APIキーが不審な活動を通報することも、AIエージェントが悪意のあるシステムと交信中と自覚することもありません。 これらのアイデンティティが侵害された場合、攻撃者は多くの場合「正当なアクセス権」という望みどおりのものを手にします。
Red Canary社の「2025 Threat Detection Report (2025年脅威検知報告書)」によると、2025年におけるアイデンティティ攻撃の発生件数は2024年比850%と激増し、年間合計検知件数の53%を占めており、認証情報の盗難やアイデンティティを狙った攻撃手口の急速な広まりを浮き彫りにしています。
AIの活用場面が増えるたびに、マシンアイデンティティ、サービスアカウント、認証情報が環境内に新たに追加されます。
この課題の本質は、単にアイデンティティの数の増加にはありません。 その多くが必要範囲を超える権限を持ち、予定以上の期間アクティブなままとなるか、継続的に監視されることなく運用されることにあります。 個別に見れば軽微な問題に思われますが、 総じて見ると、攻撃者が悪用可能な、信頼性の高いアイデンティティの集合体が拡大している状態と捉えることができます。
自動化を進めるほど、重要なシステムにアクセス可能な個人だけでなく、人間以外の要素も把握することが不可欠となります。
MSPにとってAIアイデンティティの保護が重要な理由
ほとんどの組織にとって、この急増するアイデンティティエコシステムは技術面だけでなく、可視性の面でも課題となります。
多くの企業は、環境内に存在するNHIの数、NHIがアクセス可能なシステム、NHIの権限が現在必要かどうかをそもそも把握していません。 AIイニシアチブを主導するのは、当座の課題の解決に専念する個別の部門、開発者、事業ユニットであるのが通例です。 アイデンティティの長期的なガバナンスが議題となることは滅多にありません。
この方面の専門知識・ノウハウは、MSPにとって差別化要因となります。
従来MSPは、エンドポイントの保護、インフラの管理、サイバーセキュリティソリューションの導入支援を主な事業領域としていました。 クライアントは業務へのAI導入を進める際、認証情報、権限、マシンのアイデンティティといったAI導入により派生する要素のガバナンスを支援する、信頼のおけるアドバイザーを必要とするようになります。
クライアントがAIへのシフトを進める支援をするうえで、MSPはまず次の基本的な問いを投げかけます。
- 現在、どのAIアプリケーションが重要なビジネスシステムにアクセス可能ですか?
- 現在も必要性の高いサービスアカウントとAPIキーはどれですか?
- 各マシンのアイデンティティは誰が所有していますか?
- 権限は最小権限原則に準拠していますか?
- 認証情報のローテーションはどのように監視、保護されていますか?
MSPにとって上記の点は、サービス提供の出発点であると同時に、AI環境の変化に合わせて継続的な見直しが必要なテーマとなります。 その結果、テクノロジープロバイダーからAI関連アイデンティティのガバナンスに関する戦略的アドバイザーへと進化し、責任あるAIの導入を実現しつつ、長期的なリスクを最小限に抑える支援ができます。
KeeperMSPでクライアントの安全なAI基盤構築を後押し
問題を理解することは第一段階にすぎません。 クライアントがその問題に対処する支援をするには、アイデンティティセキュリティの適切な基盤が必要です。
この基盤となるのが、人間とマシンの両方のアイデンティティによる特権アクセスを継続的に管理可能な枠組みであり、その確立を支援するのがMSPの役割となります。 具体的には、認証情報に対するセキュリティ対策、最小権限アクセスの適用、シークレットの保護、特権セッションの監視、アイデンティティライフサイクルを通じた可視性の維持がこの枠組みに含まれます。
MSPは、AI関連アクセスを個別のセキュリティ課題として扱うのでなく、より広範なアイデンティティセキュリティ戦略に組み込むようクライアントに推奨する必要があります。 アクセス権の帰属が従業員、アプリケーション、AIエージェント、自動ワークフローのいずれにあるにせよ、同じ基本原則 (アクセス検証、最小権限の適用、認証情報の保護、アクティビティの継続的な監視) を適用する必要があります。 方針を統一することで、複雑さが軽減されると同時に、クライアントの環境が進化し続けても一貫したセキュリティ制御を維持できます。
KeeperMSPは、これらの課題を念頭に置いて構築されています。 ゼロ知識セキュリティアーキテクチャ、企業向けパスワード管理、特権アクセス管理 (PAM)、シークレット管理、リモートアクセス保護機能を通じて、KeeperはMSPがクライアントの認証情報、シークレット、特権アクセスパスウェイといった攻撃者が切望する情報を保護するのに貢献します。 分断ツールと異なり、Keeperではゼロトラストの原則と継続的なアクセスガバナンスに基づいて構築された単一プラットフォームで人間とマシンの両方のアイデンティティを管理できることもメリットとなります。
MSPにとって、その価値はテクノロジーの枠をはるかに超えるもので、 クライアントのAI活用を支援するために必要な可視性、制御力、拡張性が得られ、アイデンティティ攻撃の対象領域が広がる前に、セキュリティ戦略を講じることができます。
AIを導入するたびに、新たなアイデンティティセキュリティリスクが発生
AIを導入するたびに、組織のアイデンティティエコシステムは拡大します。それに伴い、人間のアイデンティティと同様の厳格さで新たなアイデンティティを規律する責任も高まります。 組織がこの関係に早期に気付くことができれば、攻撃対象領域を不用意に拡大させることなく、より優位な立場でイノベーションを進めることができます。
MSPにとって、クライアントがアイデンティティを理解し、規律するためのサービスを提供することは、新たなテクノロジーをデプロイする以上の価値があります。 これにより、クラウドコンピューティングへの移行以来、サイバーセキュリティ界における最も大きな転換の最前線に立つことができるためです。 AI導入に伴う課題解決を支援することで、MSPはクライアントが可視性や制御を犠牲にすることなくイノベーションの潮流に乗り続けることを可能にすると同時に、かけがえのないアドバイザーとしての役割を強化できます。
AIが導入されるたびに、新たな機能以外の要素が組織に加わるため、 保護が必要なアイデンティティも増えていきます。
アイデンティティのフットプリント拡大にMSPが対処するうえで、「Keeper MSPパートナープログラム」が、どのように役立つかをご覧ください。